「狂犬病」、海外は普通に発生する地域も。
海外旅行とはいっても山奥の探検や秘境ツアーに参加するわけでもあるまいし、事前の狂犬病予防接種など必要ない…と、お考えでしょうか。
確かに、海外旅行先がいわゆる先進国で、ごく普通の観光スポットをツアー観光する場合などはそれほど心配する必要はなく、狂犬病の予防接種を受けずに旅立つ場合が大部分ですし、通常はそれで問題はないでしょう(ちなみに、法律上必ず受けなければならない予防接種は、アフリカ、中央・南アメリカを旅行するときの黄熱病だけです)。
しかし、かといって海外旅行で100%狂犬病の予防接種が不要かというとそうでもないケースもありますので、まず少なくとも知識として、以下のようなことを知っておいて頂きたいと思います。
日本国内ではすでに50年も前に根絶された狂犬病ですが、海外、特にインド・中国・フィリピン・パキスタン・バングラデシュ・ウガンダといった国々では、狂犬病の発生状況が大変深刻になっています。
海外では年間5万人程度が狂犬病で死亡しており、むしろ狂犬病が発生していない地域のほうがまれ、と考えてちょうど良いくらいでしょう。
特にアジア地域は、ほとんどが狂犬病の発生地域といいった感じです。2006年にはインドで2万人弱、中国では3,000人以上が、狂犬病により死亡しています。
日本では、狂犬病の国内発生報告こそ1957年を最後に無いものの、2006年にはフィリピンで犬に噛まれ、帰国後に発症して死亡した「輸入感染者」が、2件でています(それ以前には1970年に一件、死亡事例が発生)。
狂犬病は、動物の唾液中のウイルスがその傷口などから最終的に脳に達して発症するもので、潜伏期間はおよそ1~3ヶ月程度と言われます。
発症した場合は麻痰やけいれんなど起こし、発症後は最大10日程度で100%死に至るという、恐ろしい感染症です。
と脅かすようなことを書きましたが、あくまで海外旅行にあたっての万一の場合の予備知識ということで、ご理解くださいね。
さて旅行する国や地域にもよりますが、海外旅行中にいちばん想定されるのは、「犬があたりをうろうろしているような地域を旅行中に、うっかり犬に足を噛まれたりした場合」でしょうね。
この場合は、素人判断は避け、すぐに傷口を十分に石鹸水で洗い流し、噛まれた傷の手当て及びワクチン接種処置のため、たとえ海外旅行中であっても、すぐに地場の病院に行くべきでしょう。
狂犬病はとりわけ発症後が恐ろしいですが、噛まれたとしても直ちにワクチンを連続して数回摂取すれば、発症は防げます。
したがって、一刻も早いワクチン接種が必要になります。また、現地の接種で完了しない場合もありますので、帰国後はすぐに病院に行き、必要に応じて接種を続けることになります。
日本にいて狂犬病と言われてもピンとこないかもしれませんが、仮に旅行先がヨーロッパやアメリカからといった地域であっても、旅行する場所や状況によっては、狂犬病の予防接種を受けてからのほうが安心、という場合があり得ます。
海外旅行前の狂犬病の予防接種に関する詳細については、保健所や検疫所に問い合わせてみましょう。
また、厚生労働省のホームページ内「狂犬病について」においては、フィリピン・中国など各国の関連情報リンクなど狂犬病についての情報も掲載されていますので、関連箇所を必要に応じて確認しておきましょう。
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