海外旅行先、万一の手術等の際に、知っておきたいこと。
海外旅行先で、交通事故にあってケガをしたり、脳卒中や心筋梗塞などで倒れたといった非常事態の場合に、保険会社のサービスなどを使って日本語の病院を探すのはやめ、一刻も早く救急車を呼ぶほうがよいということは、海外旅行、旅先での救急車の呼び方を知っておきたい。のコラムでお話ししたとおりです。
このコラムでは、海外で病院にかかるとき、知っておいたほうがよい点に
ついて、もう少し追加してご説明します。
まず、「輸血」についてです。
WHOによれば、世界中で輸血などに使われる血液の何割かは、
恐ろしいことにスクリーニングが行われておらず、ノーチェックで使用
されているとのことです。
発展途上国の病院などで輸血を受けた場合、B型肝炎やC型肝炎、そしてエイズなどに輸血を通じて感染する可能性は、現実問題としてかなり高いと言われています。
ほかにも輸血に際しては、輸血される血液に対してアレルギー反応を
示したり、拒絶反応による疾患の発症リスクもあります。
また、医療機関が血液型の判定ミスや血液の取り違えをして、誤った型の血液を輸血してしまう事故などは、どこの国でも起こりうると言われています。
したがって、旅行する地域・国にもよりますが、まずは基本姿勢として、
海外では極力輸血を受けることを避けるようにするべきです。
また海外旅行先によっては、あらかじめ出発前にワクチンを接種しておくなどの予防措置をしておいたほうがよい場合もあるでしょう。
医療行為が自分に対して行われる場合、「ヘモグロビン濃度が一定の水準を下回らない限りは、医療行為において輸血を行わないで欲しい」という
希望を明記した「英文による診療情報提供書類」をあらかじめ作成し、
持参される方もいます。
海外旅行の時に、自分が大怪我をして病院に担ぎこまれるということは、普通はまず、考えないものです。
しかし、事故や犯罪現場、あるいはクーデターに巻き込まれる場合も有り得ますし、誰にとっても、海外旅行先で不測の事態が起こらないという
保証はどこにもありません。
海外旅行時に自分が医療行為を希望する場合に、輸血を希望するか
否か、そしてもし輸血をせざるを得ないとしたらどういう条件の場合で行ってほしいかということについて、医師とも相談の上、具体的条件・希望を
英語で記載した「医療希望書類」を作成し、これを持参すると安心でしょう。
(関連して海外旅行、持病のある人は、ここに気をつけて出発を。のコラムもご覧ください。)
もうひとつ、「インフォームド・コンセント(Informed consent)」について、海外の病院では、日本の場合と基本的に考え方が違うことに注意しましょう。
日本では「医師法」において、医師は患者の診察の依頼を拒否できないと定められていますが、海外、とりわけ欧米の医療機関においては、医師が患者と「インフォームド・コンセント」にもとづく契約が結べない場合、診察
そのものを拒否することができます。
「インフォームド・コンセント」というと、日本では、「患者が医師から治療についての説明を受ける権利」という印象が強いです(本来的には、日本に
おいても患者からの正しい情報提供が必要という点で、用語の定義は
海外と同じなのですが、あくまで印象としての話で)。
しかし海外では、医師と患者が同等の立場に立ち、医師の側も患者に
病名や治療方法などを伝える義務がありますが、一方で患者もまた、
自分の健康状態や持病、薬に対するアレルギーの有無などについて、
医師に対して正しい情報を提供する義務があるという意味で、使われる
用語です。
単純に、英語で医師の質問に答えられないために治療を拒否されている場合も現実にはあるようですが、海外では、医療事故に対する裁判などで医師側が高額な賠償請求されることがあり、そのリスクを回避するために、患者から正確な治療のための医療情報が取れなかった(すなわち
「インフォームド・コンセント」が成立しなかった)場合には、治療そのものが拒否されることがあります。
日本で街のお医者さんにかかるときのイメージとは違って、以心伝心に
よるコミュニケーションを期待できない、そして患者としても正確な説明
責任というものが発生するということについては、心の片隅に留めておいてください。
万一のときにこのような事態を回避するためには、海外旅行、持病のある人は、ここに気をつけて出発を。のコラムでも記した「英文カルテ・英文の処方薬リスト」を海外旅行時に持参するというのがベストですし、時間のあるときに自分でもそれを読んで、自分の健康状態や持病、
既往歴等について、英語である程度のことは説明できるようにしておくと、なお良いでしょう。
海外旅行先においては国内と異なり、自分自身の備えがどこまで出来ているかで、万一の大きな事故や病気の際にもたらされる結果が違ってきます。
「自分だけは大丈夫」という根拠のない楽観をもって何も考えずに海外に旅立つのではなく、いざという時に備える危機管理のマインドを持ちながらも、自己責任のもとで、海外旅行を楽しむようにしたいものです。
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